ご案内

産んだ途端に、いっぱしの親になったつもりだろうが、これはパチモンの親だ。
子どもにとって自分の母親は「世界一の母」である。
その母親(父親)に全身を委ねきって、無心に手をつないで歩いている子どもと、その手を引いている親の姿は、最も美しい光景である。
だが「世界一の母」はだんだん減少しているのではないか。
十に「涯」少年を見習え本章で見てきた「自分」バカどもに、見習ってもらいたい少年がいる。
実在はしていない。
ある一風変わったマンガのなかの少年である(「涯」という名前)。
かれは殺人の無実の罪を着せられた十三歳の中学生だが、同時に、自立を目指す孤独な少年でもある。
自慢の格闘技で包囲した警官隊に対抗しようとするが、無力を知って投降する。
そこから奇怪な物語がはじまるのだが、かれは現代においてはつぎのように考える「ヘン」な少年だ。
土二歳の涯は、級友たち(いや、かれにとっては友ではない)が、じぶんの親を小馬鹿にしたような話をしているのを見聞きして、その「なまくらな会話や仲回」を軽蔑する。
かれはこのように独言する。
喰わせてもらってるくせに!自分ではビター文稼がず、生活の全てを親がかりのくせに、その肝腎な部分は棚上げにして、罵言笹一日、親の出来不出来を宣うのは見苦しい。
でそんなに嫌いなら、中学を出たらすぐ独立かと思いきや、そうでなく、どうもその先、高校、大学、いや働くようになっても、金、世話だけは焼き続けてもらうつもりらしかった!なに、それ?まるで理解らない。
どう考えても、働く親父、世話を焼く母の方が立派だった!そして、ひとり暮らしをするようになって「涯」はこう考える。
自由。
そう、これが自由だ。
自由は何でも出来る事じゃない。
自由とは自分に由ることだ。
となれば当然限られる。
非力なオレなら尚更だ。
限られる!やれない事だらけだ。
オートバイも海外旅行もこじゃれたシャツも贅沢な食事もない。
(略)しかし、それはオレの身の丈によって貧しいのだから、文句を言うのは筋違い。
甘んじるべきだと思った!どうしてもそれがイヤだと言うのなら、自分の力を伸ばせばいいのだ。
それを成せない以上、不遇は当然、そう納得した!そうだ。
何でこんな簡単な事に今まで気がつかなかったのか。
自分によって生活の全てが決まるから現実なのだ!(福本伸行『無頼伝涯』傍点原文、講談社)「自由とは自分に由ることだ」。
なるほど、と感心してしまうわたしも幼稚だが、不平不満をいうのなら「自分の力を伸ばせばいいのだ」というのも、あたりまえすぎて、そのとおりではないか。
自分のことはすべて「自分」で決定する。
口出し、激励、忠告、批判は一切ご免こうむる。
なにもかも「自分」のしたいようにやるから。
そのかわりもし失敗したら、それは教師や親や社会の責任だからな。
欲しいものは全部手に入れなければ気にくわない。
「自分」にはそれを望んで当然の、ありあまる権利があるではないか。
ただしいっておくが、おまえたちには何の権利もない。
ここまで「自分」をのさばらせた挙句に、この「自分」はどうなったか。
なにかおもしろいことはないかと群れ、浮遊しているだけではないか。
これはマンガである。
だがいまの若者のなかで、この主人公の考えに共鳴する者は少なからずいるはずである。
「がんばらない」やつはがんばらなくていいが、「がんばる」若者はどうか全力でがんばってもらいたい、と思う。
気恥ずかしいバカ……ケーキの名前なぜケーキ屋(あたりまえだが)のケーキの名前はあんなに恥ずかしい名前をつけているのか。
買う側の身にもなってもらいたい。
「モンブラン」や「エクレア」なんかはまだいい。
もうとんでもない名前のものがある。
フンユー・パリジェンヌ」とか「ゴッホのようなバナナ」など、「パンティ」とか「ブラジャー」というのよりも恥ずかしい。
しかたないから「ここからここまで一個ずつ」とかいうはめになるではないか。
早朝のバカ……エロ記事を読む会社員もう朝っぱらからスポーツ新聞のエロ記事を読んでいるのである。
いったいどこから、そんないきなりの欲情が湧き出してくるのだ、この中年バカは。
朝からすき焼きでも食べているのか。
しかし痴漢も朝っぱらからだな。
もちろん性欲は時間を問わないというのはわかるが、すこしは恥を知れよ。
昼時のバカ……楊枝を唾えている会社員昼飯時、得意げに楊枝を唾えて歩いているバカサラリーマンがいる。
なんのつもりかね。
たいていが小太りというのもどういう料簡なのか。
ひとがまだ食べている目の前で「チッチこと歯をせせるのも無神経である。
上品ぶって手で隠してもだめ。
発掘したものをまた飲み込んでいるじゃないか。
せせり終わった後、食べ終わった皿や丼や灰皿に楊枝を放り込むのも言語道断の所業である。
夕暮れ時のバカ……「パパです」の会社員駅のホームで、会社員風の中年が携帯をかけている。
「パパです。
ママは?」と、子どもに聞いている様子。
バカである。
なぜバカなのか疑問の向きもあろう。
「うん、いま○○」と報告するのはいい。
だが、五十男の「パパです」は、即、問答無用のバカである。
とおりすがりのバカ……外国で会う日本人こっちが日本人らしいということを、遠くから見当をつけていて、とおりすがりに百分の一秒くらいの早業でチラッと見る、あの警戒と関心と牽制の混じった目線はなにか(ということはこっちも見ているわけだが)。
といって、「旅行でっか?」とあつかましく来られるのも煩わしいぞ、このハゲチャビンが。
喫茶店のバカ……互いに勝手なことしているカップル喫茶店でおたがいに雑誌とかマンガを読んで一言も話さないバカ。
ふたりでいる意味がないじゃないか。
余計なお世話だが、早く家に帰りなさい。
付き人バカ……女の荷物やバッグをもつ男まるで使用人である。
丁稚みたいに女の後をついて歩いている。
女はマネジャーを従えた女優のつもりか。
椎名誠の『週刊文春』連載のエッセイのなかに、便所から出てきた女にハンカチを渡すべく待っているバカ男を目撃した、とあった。
パリやなんかでも、男がフーフーいいながらでかいブランド品の袋をいくつももたされているのだ。
田嶋陽子よ、心配するな、男のドレイも随分増えてきたぞ。
まだやってるバカ……。
フロレスファンプロレスがショーであることはいまや自明であるが、あれに興奮する神経がわからない。
いまでも深夜にテレビでやっているが、観客席は満員である。
アントニオ猪木に頬下駄を張られて喜んでいるファンがいる。
春一番はおもしろいけど。
自動車命バカ……土足厳禁の車好きメシよりもなによりも車が好きなのである。
ぴかぴかに磨き上げる。
スリッパに履き替える。
傷でもつけられようものなら、怒りまくるのである。
どうして埃まみれの車ではいけないのか。
多少へこんでいてもいいではないか。
関係ないが、ついでにいっておくなら、土足厳禁を土禁、一方通行を一通、駐車禁止を駐禁、などというのもやめにしたい。
もつれるバカ……別れ話がこじれて女を殺すバカもつれるのはしかたない。
だが殺すことはないじゃないか。
「かっとなって」殺すバカも同類である。
ただ、こんなヤツを番外篇に入れるのは重すぎるか。


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